新明解で遊ぼう!!
お久しぶりです。山室です。
皆さんは以下の文が何を説明しているかわかりますか?
「洋風の、ぷりんぷりんした生菓子。」
そうです。プリンです。(正確にはプディングです。)
これは何かと言うと、「読む辞書」と呼び声高い『新明解国語辞典』によるプリンの説明です。
実はこの文はタモリがメインMCで2005年から2008年までフジテレビ系で放送されていた「タモリのジャポニカロゴス」という番組で新明解国語辞典のオモシロ説明文として取り上げられていたものなのですが、
他にも変な説明があるのか?
というところが気になりますよね。
そこで今回は新明解国語辞典を適当に開いて本当に面白い説明がなされているのか確認してみたいと思います。
参照するために用意したのは『新明解国語辞典第七版』(以下新明解)です。比較のために手元にあった『ベネッセ表現読解国語辞典特装版』(以下ベネッセ)も用意しました。
この記事を読んでいる方もお手元の辞書と比較してみてください。
ちなみにベネッセにはプリンの項目はありませんでした。
とりあえずプディングの見開きになにかないかと思って見てみましたが、それほどぶっ飛んだ説明はないように見えました。
【物騒】の説明は「ああ、そうなんだ。言われてみれば確かに。」とはなりました。
ベネッセも同じ説明でした。
どんどん行きましょう。
「ちたい」から始まる見開きでした。もちろん「痴態」も出てきました。
痴態って変態的な情動がおかしい状態のことかと思ってましたけど結構ふわっとした意味なんですね。それとも出版物だからソフトになってるんでしょうか。
悲しいことにベネッセは痴態について説明してくれませんでした。今回の企画には不向きな辞書だったかも知れません。
「ち」なので当たり前といえば当たり前ですが「乳」に関する項目が多い気がします。
「乳臭い」とか「乳繰る」(借字)とか、ベネッセからすれば「説明するほどのことか?」となりそうな言葉が並べられている印象です。
【ちちくび】は「乳首」の新しい表現らしいですけど聞いたことないです。
【縮れ毛】。
「血の海」なんかも常用化してますけどかなり文学的な表現ですよね。
初見だと「四股名かな?」と思ってしまいそうなので説明してくれるのは親切ですね。
ここで挙げた語は「乳臭い」以外はベネッセでは取り上げてません。
「この度」〜
続いて「このたび」からの見開きですが、それほど「んん???」となる説明はないような気がします。
そもそもプリンの説明がおかしく感じるのも「わざわざプリンを説明するのか?」という読者ー筆者間の熱量ギャップがあり、その上でなされる説明が「ぷりんぷりん」という材料や製法、歴史などを一切無視した「食感重視」の説明であるという情報量のギャップによるのかも知れないので、「意味がめちゃくちゃ自明な語」の方が面白い可能性がありますね。
木の実ナナ。(古風な表現)
(なぜか背景透過の木の実ナナの画像)
「のっけ」〜
ページの頭に「のっけ」を置いたのはわざとなんでしょうか。
「のっしのっし」を説明するあたりも伊達じゃないですね。
「ので」「のに」を説明するのも、なんというか、『強さ』のようなものを感じますね。
「表現読解辞典」を名乗るベネッセでもこれらの説明はありませんでした。(巻末の付録に文法説明として乗ってました。)
これもいいですね。幼児と会話してるみたいだけど確かにそうとしか説明できない。
ベネッセはもうちょっと頑張ってました。
「荒稼ぎ」〜
「ノベライズ」とか「コピーアンドペースト」とか割と新し目の言葉が多いのかなと思ったらしっかり古い言葉もありますね。
「学校荒らし」も「古本屋荒らし」も「道場荒らし」も聞いたことないです。(ジェネギャ?)
個人的に気になったのは「新た」の説明ですね。
「今までにない状況なので過去に囚われない」とか「最新だから生々しい」というのは言われてみれば全くそのとおりなのですが、脱落した視点でした。
辞書遊びといえばエロい言葉を探してニヤニヤするというのが定番ですが、
めちゃめちゃエロいですね。
「南東」〜
「難読」の説明がめちゃくちゃ親切。
ベネッセは「漢字や熟語の読み方が難しいこと」としか説明してないですが、難読語の例まで出す親切ぶり。
「何なら」って「相手に持ちかける様子」の方を指してたんですね。
(新明解の説明)
新明解は「軟派」を不良行為と説明していますが、ベネッセの説明はニュアンスが違います。
(ベネッセの説明)
説明の内容が面白いという部分も確かにありますが、新明解の面白さはやはり言葉のチョイスにあるような気がしてきました。言葉を集めて五十音順に説明しようとなったときに「それ持ってくる?」となるような言葉を選び、説明に於いても「その視点から説明する?」というポイントを選んでいるように感じます。
「既成概念を既成概念で説明する」という辞書の既成概念を壊しているとでも言えるのでしょうか。
それでいて嘘じゃないというところが偉大なところのような気がします。
と、ちょろっと考えたところで疲れたので次でやめます。
クリスマスおめでとう。
終わり。
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